そのうちにカルメーロが到着!あれれ、でも小脇にワイン6本入りの箱を抱えています。おもむろにそれを原始人に渡すと自分ももう一箱抱えて歩き出します。
そのうちにもう一人、カルメーロの友人のエンリーコが路上で加わります。え?ギター持ってきたの?何で?
あれ、そのうちに大きなビデオカメラを背負った屈強な男性。おっしゃれに着飾った女性もどこからか現れ、そこにカルメーロの高校生の姪っ子さんとその友人たち。総勢15名はいたでしょうか。まるでハメルンの笛吹きのよう。
「そろそろ入るか」とカルメーロ。でもどこに?「Barbiere(床屋)だよ」と、おもむろに道の向かいにある床屋さんに入ります。
モダンな感じの小さな床屋では実際にヒゲをあったている人がいました。でもそこでカルメーロはワインの栓を抜き出し、おつまみもどこからか出してきました。
エンリーコはギターを手に陣取るスペースをそこあそこと探し出します。
「このへんはどうだ?」と洗髪用の椅子に腰を据えるとポロロン♪♪ジャガジャン♪ リハーサルをはじめます。
みんな普通のことを当たり前にやっているかのように歌い、飲み食いを始めます。わたしも原始人も、NZ人夫妻もきょとん、、、 たった一つアブノーマルなのは大真面目にカメラを回している大男だけ。
その時点で初めてカルメーロが原始人にこういいました。
「わかんないかなあ、Barbiereなんだよここは。Bar-biere、つまりBar (バール)da bere(飲む)だろ。ただヒゲ剃ってるだけじゃおんもしろくない。」
どうもカルメーロが床屋の主人と前もって打ち合わせておいた小さな吃驚イベントだったのでした。でも、床屋のお客さんはそんなこと知りませんから吃驚!クリームを顔に塗られて剃刀を手にした理髪師の前で身動き出来ない。まわりのなすがままです。
カルメーロたちは床屋にはいってくる人にだれかれ構わずワインとおつまみを振る舞います。その赤ワインのまた美味しいこと。プラスチックのコップで出されるのが残念なくらい。
ラベルこそ貼ってありませんが、なんと昨日一緒に尋ねたエノロゴに作ってもらったカルメーロ専用のビオロジックワインだそうです。美味しいはずです。
「バール・ビエレ」というこの企画、実はSkyTVの番組の撮影もかねていました。多分、カルメーロの番組に使うんでしょうね。
酒盛りは延々9時過ぎまで続きました。同じイタリアでもピエモンテのこつこつ真面目に暮らす人もいればシチリアで偶然性をこんなにフルに楽しんで暮らす人もいるんですね。
ただし、それを楽しむには多くを求めてはいけません。あるもので、今、目の前にあるものの良さを自分の目で評価して満足できる力が必要です。
簡単なことに思えますか?日本では多くの場合、情報の基本はマスメディアにあります。活字になって初めてナンボのところがあり、そういう生活に慣れてしまっているとその場で起こっている偶然の面白さを100%楽しむのは難しい。
わたしはその既成価値観に支配された社会とイタリア的主観による生活の境でまだうろうろしているのだとこのとき思いました。気づかせてくれたカルメーロとその友人たちに感謝です。
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Da Sordevolo |
Da 5 ago 2009 |