自宅裏の森の中ですでにわたしは仔牛担当になってしまっていました。
ちょっと木陰の牧草地で牛を休ませます。
急な運動をした牛の体からも湯気が、、、
写真にある、牛飼いの必須ウアイテム「
Pate-la-vachi(パテラヴァーキ)」で草を食んでのんびりとして一向に前に進まない仔牛のお知りをちょんちょんとつついてみたのです。
なんと聞き分けよく前に進んでくれるんです。調子にのってあの子もこの子もちょんちょん。
一緒に参加した通称「原始人」は危ないから牛に近づくななんていっていましたが、気が付いたらわたしは牛40頭の群れの真ん中に陣取っていました。
牛を追う他の本物の牛飼いの人たち、この地域でマルガーリ「Margari」と呼ばれる人たちですが、4,5人でこの牛をムクローネ山の標高1400mのムワンダ地区まで連れて行きます。
マルガーリの人たちはたいていシャイです。牛のお尻をたたいている私におじさんの一人が近づいてそっといいます。
「今日は空気がええのお、、、」
あまりに何気ない一言なのに、実感があるのです。わたしもそれに嬉しくなってしまって、、、。
このころにはわたしの低血圧も消えてなくなっていました。
それどころか朝のぴりっとした肌寒さに不思議と力が体の中に湧くのを感じます。
ここでさっきのおじさんが原始人とわたしにちょっと説明してくれます。
『これまでは朝の冷気で牛も活発に歩けたが、ここからは陽が照って気温も上がり、牛が山を登るのに難儀する。今日は空気がいいから、いつもよりは時間がかからないかもしれないが、それでもここまでの半分の速度になるだろうよ。』
、、、さっきの『ええ空気』にはそんな意味があったのです。気温や湿気と牛の歩みをちゃんとみていたんですね。
こうしてわたし達のトランズマンツァ(
Transumanza)はいよいよ山道を登り始めます。
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