わたしはビエッラの人たちの気質が好きです。
もちろん人の性質を一般化するのは良くないのですが、それでもけっこうビエッラ人みんなに共通する性質はあります。
勤勉家、倹約家、几帳面。およそイタリア人の気質のイメージちはかけ離れたものですし、わたし自身もこれらを友だちづきあいする人の基準とはしていません。でも傍からみれば、それが『朗らか、優しさ、独創的』などどいった他の気質より人間味を覚えることがあります。
例えば、ある日、スーパーでレジ待ちをしていたのですが、その日は休日とあってそれぞれが大量の食料調達で待ち時間もながくなります。やっと私の番が来たと思いきや、私の前でレジを済ませた奥さんが
「ちょっとあなた。」とレジ係の男性の注意をひきます。鰯のパックを手に取り「これをレジに通さなかったのではありませんか?私のレシートには鰯の価格が含まれていないように思います。チェックしてください」
そういうと彼女もレシートと品物を比べてチェックし、やっぱり入っていなかったとその鰯の代金を払いました。一般のイタリア人ならああ得をしたと喜んで口を結びさっさとその場を去ったでしょう。
そして通常なら、その人の正直な態度は評価されるべきでしょう。ところが、担当のレジ係の男性はお釣りを渡し、彼女がそれを財布にしまうのを見ながらお礼を言うどころか彼女にこう嫌味をいいます
「ああ、お釣りもしっかりチェックして。多く返しすぎたかもしれないからさ」
ちなみにこのレジ係の男性はイントネーションからピエモンテの人でないことは明らかでした。
彼女は少し返す言葉が見つからなかったようですが、気を取り直すとこういいました
「私は自分の払うべきものはきちんと払ったのをみたでしょう。あなたがお釣りをくれすぎていたらその場でちゃんと返しています。」
その女性はきっと本当にそうしていたでしょう。50代の白髪の髪をきちんとブローした整った身なりの人で、顔の刻まれた厳しい皺を見ればこれまで几帳面をモットーに生きてきた典型的ビエッレーゼと頷けます。
他人に施しもしなければ、喜ばすためにプレゼントを与えるということも決してしないだろうけれども、この人は人のお金を盗むようなことは絶対にしないでしょう。勿論わたしの思い込みですが、彼女の顔の皺にそう書いてあるように思えました。
ビエッラ人独特の潔癖な気質。それがこれまでこの街の主要産業だった毛織物に織り込まれてきたと思います。生地に使われる一本一本の糸の色には混じり気がない。世界トップを誇るカシミアのセーターをとっても色の鮮やかさの違うのはここからきていると思わざるを得ません。
そうそう、冬場ビエッラにお越しになる方はお気をつけ下さい。ビエッラの人はお召しになられているセーターやジャケットに顔を近づけると折り目を引っ張って細かくチェックします。 、、、少なくとも以前はそう人が多くいたし、わたしもやられました。(笑)
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