モスカの5代目アルベルトに連れられて行った肥育農家の1件目、パオロさんのところでその飼い方に驚かされました。文字通り手塩にかけて牛を育ててている。
日本で目にしていたコンクリートの厩舎で一頭ずつ鉄柵の仕切りの中で飼われているのは確かに違います。
確かにそういう飼い方をしているところは同じピエモンテにもあり、それが決して悪いというのではありません。そういうところも連れて行ってくれました。そこにも肉付きのとてもいい牛がいました。
ところが、一番最後に訪れたこの農家の去勢牛はパオロさんの牛ともまた違いました。
70歳を越す御夫婦が二人がたった2頭の去勢牛を育てている、その厩舎の入り口にその牛の頭が見えたとき、まるで洞窟のなかに眠るドラゴンでも目にしたような(そんな経験決してしてませんが)ドキドキを覚えました。
この牛、バリンといいます。 溺愛していた娘さんが遠方に嫁いでしまったとき、御主人は落ち込んで家に閉じこもりがちになってしまったそうで、それを見かねた奥さんが牛でもかったらと冗談交じりに連れてきた仔牛を育てているうちにそれが二人の楽しみになってしまったそうです。
だから、他の肥育家のように多数の牛は飼いません。2頭。しかも、昨年バリンが出荷できる4歳なら、もう一頭はまだ2歳に達していませんから、出荷は来年。3年に一度しか出荷できません。
彼らはバリンにいつもまるで子供に話しかけるように声をかけて体を拭き、えさを与え、厩舎の掃除をします。
この老夫婦とバリンが小さな厩舎にいる姿はまるでおとぎ話の一ページです。
モスカさんはこの牛を仲買人の紹介ではじめてみた日に、購入契約をしてしまいました。今年はこの牛しかない!と、、、。その後、さらに高い価格で買うから自分に売って欲しいと内々に交渉に来たのは一人や二人ではなかったそうですが、決まりは決まり、彼らは笑って断ったそうです。
肥育が進んでいなくてもその牛の最終的な仕上がりが想像できるのでなければ、、、、。それが肉屋の仕事!!
バリンとこの老夫婦の別れは悲しかったのかもしれません。去年の12月のはじめバリンは、モンカルヴォの去勢牛の品評会で他の牛と同じようにモスカさんの手に渡りました。
品評会の日は大雪で私は地団駄踏んで悔しがりましたがとうとう車を走らせて会場に駆けつけることがなりませんでした。
アルベルトにお昼過ぎ電話をかけると、パオロさんの牛が見事1等賞!そして彼らの期待どおりバリンがグランプリをとったと嬉しい知らせをくれました。
今年は12月9日が品評会の日。今年は絶対、周りが引きとめようがどうしようが絶対見に行きますよ!!
きっとバリンみたいないい牛がいっぱいいることでしょう。
次回はお惣菜偏です。
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