さて、原始人がソルデボロ村総出で行われる5年に一度の伝統行事「キリストの受難劇」でキリストに死罪を宣告するローマ執務官ピラトの役を演じることは前回お話しましたが、
ワンシーズン31回公演と大掛かりな行事です。PRも重要!と、いうわけで現在トリノで公開中の聖骸布(L'Ostensione della Santa Sindone)にあわせ、短いプレゼンテーションをトリノで行うことになりました。
まず、聖骸布ですが磔刑にあった後、埋葬されるキリストの体を覆ったとさる布です。
信憑性は未だ専門家の間でも論議されていますが、前回の2000年以来十年目となる今回の一般公開は4月23日から1ヶ月間だけ行われ、世界中からカトリック信者をはじめ多くの人たちが参拝におとづれています。
そこでソルデヴォロ村の聖劇実行委員会はPRに聖骸布を公開中のドゥオモ近くのローマ時代のトリノの北門だった遺跡、パラティーナ門前で聖劇のハイライトシーンを45分間で綴るプレゼンテーションをすることになりました。
ピラト役3名のうち、まず初日の当番にあたっている原始人。トリノにも彼が行くことになり上機嫌!!この日は原始人から少し進化してローマ人になるわけです。
これで3回目となるピラト役、台詞も全部覚えてしまっていて原始人は稽古にもこれまであまり身が入っていなかったのが、一転してうっきうきで稽古に出かけるようになりました。
で、ちょっと私も稽古場風景をみたくてのこのこ出かけていったのです。あと一週間しかない、そんな切羽つまったある夜のことでした。
4月というのにさむーい稽古場、暖房一つ入っていない村の教会付属の集会場でトリノに参加する人のみの稽古がありました。
キリスト役は原始人とも相性のいいジャンマルコ、聖母は原始人の同級生のアンナ、百人隊長にはこれまた原始人の幼馴染のグイド。
主な役についてる人たちは2005年にすでに一緒に何度も舞台に立っていますからなれたもの。脇役が新たにオーディションで合格したニューウェイスという構成です。
そのニューフェイスが、、、ちょっとねえ。稽古なのに緊張しているのかその逆なのか、動きがぎこちない。台詞を行っているときの動きがいまどきのスニーカーはいてそのまんまのスポーティーな動き、
腰つきが変な人もいる。台詞を口しながらなぜか腰を左右に振る。なんか変、、、どうもピンと来ない。物すごく大きな不安を感じました。そこで伸ばした腕!!それ3回も、4回も腕差し出して喋らないで貫禄で一回で喋りきろうよ!!
原始人「大丈夫、大丈夫、、、ああいうのはさ、衣装着るとうまく隠れちゃうの。あのスニーカー立ちもね、皮のサンダル履くとそうでなくなるんだなあ。」
「でも、あの振りは、腰つきなんか怪しいよ」
「ああ、あれもねえ、まわりの舞台ができるとどっしりしてくるんだよ」
「ほんとうにぃ?」
「ほんとほんと」
稽古をつけるのは監督のチェレスティーノと地域でアマチュア劇団を主宰しているアンナ・ブルー二さんの二人。その二人もあまり振りや動きに指導はつけていません。
本当にこれでいいのか? 私はどんどん心配になってきました。
私がとても不安だというと原始人曰く、これはプロの芝居ではないのです。村中が一緒になって聖劇を行う。それが彼らにとっては参加理由の一番。それを真面目に芝居の良し悪しだけで議論してしまったら誰も参加できなくなっちゃう。
聖劇の「魔法」を信じなさいと原始人。
さてさて、本番はいかがなりますことやら、、、この続きは次回に、、、
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