昔々あるソルデヴォロという村に原始人が住んでいました。
原始人は、年老いた両親のキッチンで二人とお茶を飲むのが好きで、そこには父親(通称、パピン)
のゆったりしたテンポの皮肉を飛ばすのに抵抗したり母親(通称:マミン)をからったり、そうしたお喋りというお楽しみがありました。
そんなこんなで今日の午後も原始人はパピンとマミンのキッチンへ、、、と、あれ二人がいない。お出かけ?
がっかりの原始人、おもむろにマミンのオーブンを空けてみると、、、あれあれ、新しくトルタ(ケーキ)を焼いてあるじゃありませんか。
まんまるのトルタにかぶせたれた大型のカップにはうっすらと水滴のベールに覆われているのをみるとトルタを焼いてすぐ出かけたのでしょう。
原始人、おもむろにカップを引き上げるとナイフを入れようとするではありませんか!
「ふふん、見せしめさ!僕を一人にしておくからこういう事になるのさ。」
でも、焼きたてのトルタ一切れでは満足のいかなかった原始人、隣の部屋の棚の引き出しにはマミンのチョコレートが隠すように入っているのを実は知っていて、それをとりにいきます。
冬の寒さでこの隣の部屋は一時的な冷蔵庫の役目をしています。、、、と、チョコを手にふと新聞紙が見覚えのある大きさの包みになっているのに視線がとまります。(おお!!これは卵だぜ!)
みてみて卵を見つけた!もらっちまおうと有頂天でその包みを見せるのに当然私は大きくNO!! マミンが激怒するでしょう。
「僕が卵がないかと聞いたときにあるって言ったことがあるかい?」
これは冬のソルデヴォロの問題の一つです。卵が見つからないこと。
当然スーパーや食品店に行けばあるのですが、ソルデヴォロ周辺の小さな農家で放し飼いされている鶏の卵はほかとは比べ物にならないのです。
パピン曰くどんなホルモン剤が入っているかわからない配合飼料を食べて育った鶏の卵など口に入れたくない!!そこまで不信感を募らせられるとちょっとつき合いづらいなあ。
でも、実際BIOと銘打たれている卵で作ってもこの辺の農家の特にパピン、マミンが完全な信頼をおくピニャティン(彼女についてはいずれお話しするとして)が売ってくれる卵でつくるマミンのクレムカラメル(カスタードプリン)のようなコクやプリプリ感はでないのです。残念ながら動かしようのない事実。
そんな卵ですが冬場の寒さは排卵率が落ちますから訪ねていってもさすがのピニャティンさんも分けてもらえないことがしばしばです。当然、原始人への分け前も激減。ひたすら耐え忍ぶながーい冬が続きます。
私の断固とした拒否でしばし停止していた原始人の体躯が導火線に火が点いたようにどこかに飛んでいってしまいました。不思議に思っているとまもなく戻ってきて言うのです。
「卵がなくならなきゃいいんでしょう?僕の冷蔵庫には卵が買って入れてあったの。だから取り替えさたのさ。さあて、マミンが気がつくか、どういう反応をするかひとつ見てやろう!ふん、気がつくわけんがない!」
、、、原始人が買った卵は確かに色は茶色で同じような卵なのですが、あまりに大きさが揃いすぎているし、それになんといってもイタリアの法律で決められてる規格表示が記号で緑色でスタンプされています。
ピニャティンの卵にそんなものが点いているわけがない。さて、視力の落ちているマミンが目ざとくそれを見極めることができるのか!?
『ソルデヴォロ日記、原始人伝』この続きは次回に!
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