4月24日土曜日。いよいよ聖劇をトリノで披露する日です。
原始人の話では、ニューフェイスらの演技の出来はあいかわらずぱっとしないそう。
それに監督以下、参加者らは舞台の設定がどうなっているかすら知らされていません。ぶっつけ本番でお芝居をしなければなりません。これが日本だったら皆で抗議のひとつもするのでしょうが、誰も何も言わずたんたんと準備を進めます。
トリノ公演について伝える新聞記事
いまどき便利なネット上の天気予報を確認すると雨、、、予報は雨です。 雨の場合は会場を別に移して屋内で行うそうで、そうなると聖骸布を見終わった人たちを観客に当て込んでいたのがふいになってしまいます。
心配の種がどんどん膨らんでいくけれど、私はアンテナショップの仕事があってついていくこともできません。まあ、ついていっても何が出来るわけでもないのですが、、、
午前十時、原始人は参加者のために用意されたバスにはのらず、幼馴染のグイド(百人隊長役)と二人で自力でトリノに向かうことにしました。その方が夜の部の公演終了後にさっさと帰宅できるからです。
この二人にとってはかれこれ二十年ぶりの遠足みたいなもの。二人は少しはしゃいでいるようでしたが無理もないでしょう。
トリノに到着してみると幸運なことにお天気は予想を裏切り真夏のような太陽が照り、このぶんでは予定どおり野外でのプレゼンテーションとなりそうです。
あれれ、遠足気分で出かけていった二人が、、、
アンテナショップでお客さんの相手をしている私にも随時経過報告が二人から入ります。
「トリノに到着!」 「天気は最高!!」 「舞台設置無事終了」
おお、なんか順調に準備が進んでいるではないか!
「衣装もつけたぞ!!」「観光客に写真撮影を求められる」 「ローマ人の僕一人となら5ユーロ」 「グイドと二人で入ると10ユーロだ」
何を不埒なことを!!
「おお、近くにローマ料理のお店発見!!」
あんたら、なんか緊張感に欠けてない?
公演は午後4時半からと夜8時半からの2回行われます。 照明効果が生まれる夜の方が当然見栄えがするのですが、人通りの多い午後のほうが人では見込めます。
4時、原始人公演前の最後の報告
「観客、300人くらい。村の人たちもみんなはりきっている。では、ここで携帯はきるから。」
約1時間半の沈黙のあと、アンテナショップにまた連絡。
「ね、魔法はちゃんときくんだよ。ニューフェイス達もがんばったよ。初めてにしちゃがんばった。見に来てくれた人たちもよろこんでくれたよ。」
あああああぁぁぁぁ、よおかったぁ! そっか、あのスニーカー履きの腰つきは本当に衣装で隠れるのね。日本人が着物を着ると気持ちがひきちまるように、彼らも聖劇の衣装を着けるとそれぞれの役により集中するんですね。
そんな連絡がソルデボロ村のアンテナショップに入るものだたら買い物に訪れたお客さんたちも興味を持ちます。今では馴染みになったお客さんたちに説明すると彼らもビエッラの人たちですから、トリノの公演の成功を喜んでくれます。
ね、これも一つのPRなるわけです。だから、ソルデヴォロのキリストの受難劇を観に来てくださいね、って
。
、、、その1時間後
「今どこにいると思う?」
どこさ?
「グイドとね、アペリティフ飲んでんの、、、。結構感じのいいバールでねえ、気分は最高。」
、、、ふん、私はどうせショップの穴ぐらの中さ。
グイドまで「かわいそうえねぇ。あんたはまたこんどねぇ。」と私の怒りに油をさします。
彼らが少し心配していた夜の部の人手もお天気に恵まれたこの日は気温も下がらなかったせいか結局数百人が集まり、昼の部と変わらないくらいの成功をえたそうです。
本当に良かった!!
翌日の新聞でもソルデヴォロ村の民間演劇「キリストの受難劇」ダイジェスト版はトリノでも好評と記事になりました。
、、、あれ? この記事の写真ですが、後姿のローマ人はもしかして、でもって冑をつけた百人隊長が、、、
さて、次回の聖劇談では受難劇の舞台装置(本番用)のお話をしましょう。
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