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ピエモンテからぶじゃねんの陽だまる山郷生活

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『イル・ゴロザリオ』寄稿第6回 復活祭の野草摘み

今回は復活祭のころにちょうどできる野草にまつわる個人的なエピソードです。受洗からちょうど一年。色々な思いとこれまえ応援をして下さった周囲のみなさんに感謝の気持ちも込めて書きました。

では 
復活祭の野草摘み
http://www.ilgolosario.it/assaggi-e-news/attualita/erbe-selvatiche-Pasqua


もう時期が終わってしまっていた。荒くなった息を整えながら落胆のため息が一緒にもれる。『ふきのとう』は花が開いてしまったら毒性が強くなって食べられない。が、地表からにょっきり現れた芽は食べられ、そのほろ苦さをてんぷらに封じ込めて口に入れれば春の訪れをいつもと違う方法で感じられるはずだった。
 

気を取り直して今来た野道を引き返す。人里から少し離れたこの辺りに住む婦人とすれ違う。普段はあまり他人との付き合いを得意としない人だが、すれ違い際に笑って挨拶をしてくれた。

左手に『牛たたき』を握り、右手にはさみの入ったナイロン袋を持つ自分の姿に思い当たって私自身も苦笑した。昨年は長雨や仕事で足を運ぶことの出来なかったこの野道に、すみれ、アネモネ、ひな菊からプリモラまで思いつくだけの花がいっせいに咲きそろっていた。

野道をそれ、急勾配を『牛たたき』にすがってって下る。下りきったところにある牧草地には小川が静かに流れていた。今度はお目当てのクレソンもヴァレリアーナものびのびと茂り、誰もまだ手をつけられずにあった。根を残してはさみで刈り取る。

クレソンの切り口からはピリッと青い香りが広がる。硬くないかという心配からヴァレリアーナを一本手折ってみる。案外柔らかくしなりパリッと簡単に折れ、甘ったるい香りがかすかに鼻に届いた。


私がイタリアに住み出した時、嫁として家族になるかもしれない私に、グイドもエドヴィリアも、日本で何をしていたか、なぜイタリアに来たかなどと一度も聞くことはなかった。慣れない生活や言葉の問題に苦悶する私をみると

『さあ、車にのった!わしらはどこに行くのか知らんがの、車の方がちゃーんとしっとって止まるべきところで止まってくれるんじゃ。』

そういって牧草地につれていってくれた。昨日はタラッサコやアチェトーザ、今日はクレソン、明日はヴァレリアーナといった具合に、3人で毎日、野原を這い蹲って黙々とタラッサコを削ぎ、小川の石にしがみついて黙々とクレソンを刈り取った。家に戻り摘んできた野草をテーブルに広げ、お喋りしながらゴミなどを取っているうちに一日が過ぎていく。



百貨店でイッセイミヤケのシャツを買い、ネットでコンサートを予約、若狭牛を焼くのにちょうどいいワインを探し、雑誌でみたあのアロマオイルを買って試してみる。仕事があり、自分で稼いだお金で自分で選んで物が買える東京での生活はなんと楽しかったことか。

ところがここでは野原に通う一週間、現金を引き出し忘れ、週始めに財布にあった
5千リラ札が気がつくと週の終わりにそのまま残っているのを見て驚いたのは一度や二度ではない。だが、そこに何の不足も感じていなかった。

クレソンもヴァレリアーナもそしてふきのとうも、春の野草の多くはその効能に体に蓄積された老廃物を荒い流す浄化作用がある。が、私の場合、浄化してもらったのは体だけではなかった。東京から背負ってきたものを野原に全部ぶちまけて代わりに私は『土』がもつエネルギーを感じていた。そこからイタリアの生活が始まった。


1週間5千リラというマジカルな生活を今では繰り返せないが、春の最初の満月から数えて次の日曜日、つまり復活祭の日を間近に控えたこの時期には必ず野草が盛りを迎え、暇さえあれば今日のように外に出る。

クレソンとヴァレリアーナに茹で卵を加えたサラダは復活祭のラム・ローストの付け合せには欠かせないが、グイドもエドヴィリアも年とともに膝が痛むようになり一緒には来られなくなった。二人のためにも倍の量をと欲張って摘む。夢中になって教会の鐘の音も耳に入らなかったらしい。

帰り道、予定の時間になっても帰らぬ私を心配してグイドが昼寝を切り上げ車で探しに出たのに遭遇した。私と見るとにやりと笑い、あごでしゃくって車に乗れと合図する。

『家まで100メートルもないよ』

『いいから、乗れ』

家についたら、またテーブルに野草を大きく広げ、作業が始まる。歩いて帰れるけどグイドの車に乗る。


それでは皆さん、Buona Pasqua!

2015年4月2日掲載

 

 

 









 

 

 

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