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ピエモンテからぶじゃねんの陽だまる山郷生活

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『イル・ゴロザリオ』寄稿10回-山口県のミラノ博でのイベントに迫ります

 5月24日日曜日     、ミラノ博日本館で行われた山口県のイベントに参加して来ました。色々なご縁で山口の皆さんがミラノにお出でになる前から動きを追わせて頂いていたので気持ち的にも共にに歩いた気になっていた私。そんなことからイタリア人のこの素敵な取り組みを良く知って欲しいと思い『イル・ゴロザリオ』の記事にも取り上げさせていただきました。

 ご参考までにタイトルの『ザ・グレート・ビューティー』とは私の大好きなイタリアの映画監督パオロ・ソッレンティーノが昨年アカデミー外国語映画賞を受賞した作品の英語名のタイトル。(イタリア語は『La Grande Bellezza』)現代のイタリアの混沌としてカラフルかつ退廃的な部分を皮肉たっぷりに鮮やかに切り取った映画です。

では、いつものように日本語訳で紹介させていただきます。


The Great Beauty
http://www.ilgolosario.it/assaggi-e-news/attualita/great-beauty

 

『味の良さに加えて見た目の美しさ、この2つで日本語でいうOMOTENASHIをする、つまり人をもてなす、これが日本料理の原点であると私は信じとります!』
ともすればキッチンに隠れてしまいそうなほど小さな体からふり絞るように日本料理人は観客に向かって訴えるとフグの身に包丁をいれた。

 ヨーロッパで初めて猛毒を持つ魚フグを食べさせてもらえるという半ば興味本位で詰めかけたイタリア人を前にしても、数十年をかけて磨かれた腕を持つ料理人の眼差しはびくともしない。食感を楽しむために透けるほど薄く切られたふぐの刺身を、観客らの死の危険を冒して食するドキドキとは全く無関係のところで、鶴や菊の形に美しくお皿に盛っていく、その妙技にはその『おもてなし』の心が込められていた。

 これは524日、ミラノ・エキスポ2015の日本館で企画された山口県のイベントの一コマだ。人口150万人の本州最西端の県が地域の良さをPRすべくミラノに乗り込んできた。


 ちょうどイタリアという国が生まれたのと同じころ、日本でもリソルジメントに似た動きが起こっていた。アメリカのペリー提督から開国を迫られたのを引き金に侍の時代が終わろうとしていた日本で、この山口(当時の長州)はイギリス、オランダ、フランス、アメリカを相手に戦争を起こし、また西洋の威力を思い知ると海外から積極的に知識を得ようと懸命になった。幕府を倒して将軍から権力を天皇に奉還させ、日本に新しい時代を築いた藩の一つでもあった。

山口はそんな利発で勇気あった人たちの末裔の地だ。腰には刀こそ差していないが、いずれも一本の強い芯を持った人たちがミラノにやってきた。そんな誇り高き人たちだからこそ日頃から自分たちが大事にしてきた魚、寿司そして日本酒をイタリアの人たちに差し出すその手にもまなざしにも優しさと穏やかさがこもっていた。

 

『ヨーロッパで山口を紹介するのは今回が初めてです。私たちはこれまで、山口の良さを発信することに発ち遅れていたと思います。私たちの地域は三方を海に囲まれ、様々な自然の特色を持ち、良いものが沢山ある県です。それをもっと知ってもらいたい』42歳と若さあふれる村岡嗣政知事はこう語る。

彼こそ真っ直ぐで、選ぶ言葉も完璧すぎるくらいだが、特産の岩国寿司の話になると『あれは本当は足で踏むんですよ。』と、楽しそうに足で踏む真似をして見せた。その時の笑顔に彼の郷土の料理に対する抵抗し難い愛着をみた。

山口と言えば、私の3月の寄稿で紹介した新谷酒造という小さな蔵元がある。今回、新谷義直さんは来ていないが、実は大切な酒を生産者仲間である岩崎喜一郎さんに託していた。彼が2ヵ月以上も不眠不休で作ったビエッラ産イタリア米による日本酒だ。


 その名も『Il Sake』イタリア米の粒が日本のものの倍ほども大きく倍の時間と労力を要して作らなければならなかったが、4月に絞り、瓶詰されることになり、ならばちょうどエキスポに持って来られると、イタリアと山口を結ぶ食のシンボルとして会場で紹介されることになった。

作った自分が紹介できないもどかしさを感じる新谷さんを見かね、岩崎さんが紹介役をかってでた。岩崎さん自身の作る貴重な酒『長陽福娘』も含め山口の代表的なお酒のボトルが並ぶ中、彼はこの小さなボトルについて紹介する。

実は、このプロジェクトには私も2011年の震災直後から関わっていた。日本酒をイタリアで醸造することから良い日本酒をヨーロッパで普及させようという企画だが、道は今もまだまだ険しい。それでも、ビエッラの有志のおかげもあり、今回の試験醸造の運びとなった。

 口に運ぶと、すっきりした辛口で後味に複雑な深みがあった。イタリア料理にも間違いなく合う。日本で醸されたがテロワールはイタリアだった。その味わいを噛みしめていると山口の人が後ろから私の肩をぽんとたたき『色々な偶然の積み重ねでこうなったけど、ほら、ここにまたストーリーが生まれたね。』と笑って言った。涙が出た。
 
 

現代のイタリア人なら普通にできてしまうことだが、日本人にとって自分の地域や生産物を海外で紹介することは偉業だ。つい最近まで自分たちの日常的な生産物が世界に通用する優れた生産品だとは夢にも思っていなかったこと、そして言葉の問題もあるだろう。

 それが今回、こうしてエキスポ参加という偉業を成し遂げたいと彼らが思ったのはそれがイタリアだったからだ。

 歴史、芸術があり、魅力にあふれ、ダビンチやミケランジェロを生んだ国イタリアだからだ。パオロ・ソッレンティーノが映画『ザ・グレート・ビューティー』で皮肉と苦みをもって描いたような現代のイタリアの全ては理解できなくてもその混沌とした魅力に惹かれ、イタリアに挑んでみたいと夢見てしまう。

 硬い木箱から幾重にも多彩な色を織りなす岩国寿司を取りだす瞬間、フグを口にする瞬間のイタリア人の驚きの顔を想像し胸をときめかせるから老練の料理人も自分の息子ほども年の離れた知事を頼って一緒に飛行機に乗ったし、イタリアと山口をもっと近づけたいと皆が思ったから『
Il Sake』も他の優れた日本酒たちの旅の仲間に加えた。

Expo 2015に開催地に選ばれ、『食』がテーマとなった時から既にイタリアは勝利への切符を手にしていた。経済大国でも、貧しい上に戦渦に巻き込まているような国でも『食』は人の生存の根源に関わる。

 どんな国にも『食』ついて語るべきことがある。日本のように多くの資材を投じ、地方の食の豊かさを訴えようと出かけてくる国もあれば、ボリビアのように、標高の高い彼ら国で命綱のように大事な乾燥芋だけをほそぼそと展示しているところもある。ここは世界の縮図だ。



 イタリアが開催国としての威信をかけて作ったパビリオン・ゼロは人の目を奪う美しさだが、同時に決して土のにおいを忘れていないことに驚いた。山口の人ひとたちも憧れ挑んでみたい相手としてのイタリアの『The Great Beauty』がここに形になって表れていた。

 イタリアではこのエキスポに賛否両論あったことは知っている。

 が、イタリアという国を愛しているなら考えてみてほしい、もしこのエキスポが失敗に終わっていたらイタリアにとってそれは何を意味していたか、そして山口の人たちのように懸命な努力でエキスポに臨んだ人たちや飢えに苦しむ小さな国からかすかな望みをもってやってきた人たちの思いを。

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